コモン30・アンコモン15・レア5、そして抽選に出てこないひみつの4体。すべて実在の動植物を模さない完全な架空種ですが、生態のテキストは「都市の再生・森を共に育てる」というこの土地の文脈の上に立てています。
晴れた朝、木漏れ日が同じ場所に三日通うと生まれる光の粒のあつまり。数えきれない粒がよりそって、ひとつの顔をつくっている。どこからが「ひとり」なのかは、本人たちにもわかっていないらしい。ビルばかりだった土地に森ができると、まっさきに引っ越してくる。
元ネタ / テーマ木霊・群体生物(クダクラゲ) / 創発——どこからが「ひとり」か
水景のいちばん静かな水紋にすむ。のぞき込むと、こちらとまったく同じ角度で首をかしげるので、よく「水に映った自分」とまちがえられる。じつはミナモリンのほうも、あなたを「水面のじぶん」だと思っているふしがある。大阪が「水の都」とよばれた時代から、橋の下をわたり歩いてきた一族だという説がある。
元ネタ / テーマ水の都・八百八橋、ミラーテスト、ナルキッソス / 自己認識の相互性
木の根のふりをして昼寝している。しっぽの先が森じゅうの根っことつながっていて、遠くの木のうわさ話がぜんぶ伝わってくるらしい。
元ネタ / テーマ菌根ネットワーク(Wood Wide Web) / 森は地下でひとつにつながっている
水があると、かならず渡りたくなる生き物。体をのばして小さな橋になり、アメンボやアリを無料で渡らせている。
元ネタ / テーマ八百八橋・水の都 / 橋=へだたりをつなぐ装置
雨の日にだけ空からおりてくる、雨粒の先頭部隊。地面につくまえに一回転して、着地の点数をつけあっている。
元ネタ / テーマ水循環・雨乞い / 天と地をめぐる水はぜんぶ同じ水
体が砂時計になっていて、ときどき自分でさかだちする。さかだちすると時間がもどると思っているが、まだ成功したことはない。
元ネタ / テーマ砂時計・時間の可視化 / 時間は巻き戻せるか
夕方、人の影がいちばん長くなるところで昼寝する。影踏みをしかけると、かならず一歩だけ先に逃げる。
元ネタ / テーマ影踏み遊び / 影=もうひとりの自分
ツタのふりをして木をのぼる。てっぺんに着くと、のぼった高さのぶんだけ遠くを見て、また次の木へ引っ越す。
元ネタ / テーマつる植物の他感作用 / 成長は借り物の高さから
ひなたぼっこだけで生きている。おなかいっぱいになると葉っぱ色にかがやいて、まわりの草にもおすそわけする。
元ネタ / テーマ光合成 / エネルギーの源流はぜんぶ太陽
道の分かれ目に立って、どっちへ行くか一緒になやんでくれる。ただし答えは教えてくれない。
元ネタ / テーマ道祖神・お地蔵さん / 選ぶのは自分
風が来ると草といっしょに波になる。風のない日にクサナミだけ揺れていたら、それは風の予行練習。
元ネタ / テーマ風の可視化 / 見えないものは動きでだけ見える
どんぐりをあちこちに埋めては、どこに埋めたか半分わすれる。わすれたどんぐりが、次の森になる。
元ネタ / テーマリスの貯食と忘却 / わすれることが未来をつくる
ハトの群れにまぎれて暮らしている。本人は完璧に化けているつもりだが、ハトたちにはとっくにバレている。
元ネタ / テーマ擬態・都市鳥類の適応 / 「まざる」と「なりすます」のちがい
夜の道で、うしろから足音だけついてくる。ふりむくと足音もぴたっと止まる。こわがらせたいのではなく、いっしょに歩きたいだけ。
元ネタ / テーマこだま・山彦 / 存在は音でだけ伝わることがある
水の上をすべって歩く。本人は「水がかたい」と思っているので、沈むという発想がない。
元ネタ / テーマ表面張力 / 世界の見え方がちがえばできることもちがう(環世界)
花のみつのありかが光って見える目を持っていて、ハチに道案内をしてあげる。人間にはただの花にしか見えない。
元ネタ / テーマ蜜標・ハチの紫外線視覚 / 同じ世界でも見える世界はちがう(ユクスキュルの環世界)
置き忘れられた傘に宿る。持ち主が迎えにくるのをずっと待っていて、雨の日はそわそわする。
元ネタ / テーマ付喪神 / モノには時間が宿る
軒先から落ちるしずくを、下でひとつぶずつ受け止めている。「いつか石に穴があくで」と言いながら百年目。
元ネタ / テーマ雨垂れ石を穿つ / 小さな継続の力
雨上がりのクモの巣にならんだ水滴をみがいて回る。水滴のひとつひとつに、森がまるごと映っている。
元ネタ / テーマ朝露のレンズ・インドラの網 / 小さな球に世界が映る
電車の音が聞こえると耳が3倍にふくらむ。日本一たくさんの電車が集まる街なので、耳はほぼ一日じゅう大きい。
元ネタ / テーマ大阪駅=巨大ターミナル / 都市には都市のリズムがある
ビルとビルの谷間に吹く風に乗って、ゆらゆら飛ぶ。ビルができる前は山の谷間に住んでいた一族だという。
元ネタ / テーマビル風 / 都市は人間がつくった新しい山と谷
どんぐり1個をきのこ2本と交換してくれる。「もうかりまっか」とあいさつするが、もうけはぜんぶ森に埋めている。
元ネタ / テーマ天下の台所・商人文化 / 価値は交換から生まれる
「まいど!」とあいさつすると、まったく同じ声で返してくる。先にあいさつした方が勝ち、というルールで生きている。
元ネタ / テーマ大阪のあいさつ文化・ものまね鳥 / 言葉は鏡
まんまるい体に足が8本。あつあつのものに目がなくて、夕方の屋台のにおいで浮かび上がる。8本の足で8つのちがう好物をつかむ。
元ネタ / テーマたこ焼き・くいだおれ / 食は街の記憶
四角い体をした石の生き物。「わしは城の石垣になるはずやった」が口ぐせ。選ばれなかった仲間の石といまも文通している。
元ネタ / テーマ大阪城の残念石(実在: 使われず残った石垣用の巨石) / 選ばれなかったものにも居場所がある
せせらぎの音をつくっている生き物。完全に同じリズムにはぜったいしない。「ちょっとずれてるほうが気持ちええから」。
元ネタ / テーマ1/fゆらぎ / 心地よさには理由がある
晴れた夜、葉っぱに夜露をひとつぶずつ配ってまわる。朝までに配り終わらないと、くやしくて次の夜は2倍がんばる。
元ネタ / テーマ放射冷却と夜露 / 夜のあいだにも世界は動いている
アスファルトのすきまに生える草の根元に住む。「ここ、日当たりええやろ」と、せまさを自慢しあう。
元ネタ / テーマ都市の隙間植生 / 生命はすきまに宿る
綿毛といっしょに風に乗る。行き先は決めない。「どこに着くかは風に聞いて」が家訓。
元ネタ / テーマ風散布(種子の旅) / 偶然が運ぶ未来
土の中で7年待って、ひと夏だけ歌う。だから歌がとても長い。待った年数ぶん、音符がふえるらしい。
元ネタ / テーマセミの幼虫期・素数ゼミ / 待つ時間も生きている時間
街の灯りがともる時刻にだけ羽化する蛾。むかしの蛾は月あかりをたよりに飛んだが、星の見えにくい街に生まれたヨイボシは、じぶんの羽に星をともすことにした。羽の星は本物の星よりすこしだけ早く瞬くので、広場の待ち合わせの目印にされている。
元ネタ / テーマ蛾の月光コンパス(光走性) / 光害と都市適応——星が見えない街で自分が星になる
船のかたちの生き物。街の工事のたびに体の板が1枚ずつ新品に入れかわり、もう最初の板は1枚もない。本人いわく「それでもずっと、わしはわしやで」。
元ネタ / テーマテセウスの船 / 再開発と同一性——入れかわっても「同じ」と言えるか
追いかけると、ぜったいに追いつけない距離をたもって逃げる。あきらめてすわりこむと、向こうから寄ってくる。
元ネタ / テーマアキレスと亀(ゼノンのパラドックス) / 追うのをやめたとき届くものがある
水辺の葦(あし)にまざって、ずっと考えごとをしている。風がふくとみんなと同じ方向にゆれるが、考えごとはやめない。
元ネタ / テーマパスカル「人間は考える葦である」 / か弱くても、考えることが尊厳
地面の下のことにやたらくわしい。「このへんはむかし『埋田(うめだ)』いうてな、湿地やってん」と語り出したら長い。
元ネタ / テーマ梅田の語源=埋田(実話) / 土地は名前に記憶をしまっている
ワニのすがたの大先輩。「わし、45万年前からこのへんに住んでるねん」。むかしばなしがとにかく長いが、ぜんぶ本当らしい。
元ネタ / テーママチカネワニ(実在: 豊中市待兼山で発見された化石ワニ) / ディープタイム——街の時間と地球の時間
ベンチでうたたねする人の夢のはしっこを、ちょっとだけ味見する。こわい夢は多めに食べておいてくれる。
元ネタ / テーマ獏(ばく)・レム睡眠と記憶の整理 / 夢は捨てる記憶の味がする
広場の待ち合わせ場所で、ずっとなにかを待っている。「なに待ってるん?」と聞くと「ええ風」と答える。もう何年も待っているが、楽しそうである。
元ネタ / テーマ待ち合わせの街・梅田 / 待つ時間は空白ではない
暗い森でぼんやり光って見えるが、じつは自分では光れない。わずかな街あかりを集めて返しているだけ。「月かて同じやり方やで」と言う。
元ネタ / テーマヒカリゴケ(実在: 反射で光る)・月の反射光 / 借りた光でも道は照らせる
渦巻きの殻を耳にあてると、この場所のむかしの音がきこえる。貨物列車の音、市場のざわめき。殻は年々すこしずつ大きくなる。
元ネタ / テーマ貝殻の海の音・うめきた=旧梅田貨物駅 / 場所は音で記憶する——再開発と記憶
雨がやむすこし前にあらわれて、空を大きな布でふきそうじする。晴れたら仕事完了、しぼって帰る。
元ネタ / テーマてるてる坊主の民俗 / 祈りに形をあたえるということ
夜明けの街をまわって、街のねじを1本ずつ巻いていく。だから朝の街はちゃんと動き出す。だれにも気づかれないのが自慢。
元ネタ / テーマからくり・付喪神 / 都市を動かす見えない仕事(インフラと労働)
遠くで雷がゴロゴロ鳴ると、音のする方へ深々とおじぎする。「こわいもんと、めぐみのもんは、だいたい同じ方角から来るんや」。
元ネタ / テーマ雷神・「神鳴り」 / 畏れと恵みは一体
すれちがう人の肩に、小さな「ええこと」をひとつずつ乗せて歩く。乗せられたことにはほぼ誰も気づかないが、ときどき「今日なんかついてるな」と言われるのがうれしい。
元ネタ / テーマお初天神・商売繁盛の縁起文化 / 幸運は配られている——気づくかどうか
見た動きをなんでもまねする。まねしているうちに、いつのまにか自分の動きになっていく。「どこまでがまねか、もうわからへん」と本人はうれしそう。
元ネタ / テーマ「学ぶ」の語源=「真似ぶ」・機械学習 / 模倣とオリジナルの境界
一年でいちばんきれいな朝焼けの日にだけ、ビルとビルの間から顔を出す。みんなが顔を上げて空を見るのを、たしかめてから引っ込む。
元ネタ / テーマ天岩戸ひらき / 夜は必ず明ける——そして誰かに見られて朝は朝になる
森でいちばん大きな木の、そのまた奥にいる。会えた人はまだ少ない。ヌシノキが目をとじると森じゅうの葉がいっせいに静まるので、森ぜんぶがヌシノキの体だという人もいる。
元ネタ / テーマご神木・世界樹・森=超個体(菌類ネットワーク) / 森はひとつの生き物かもしれない
雨の夜、水景の水たまりと池と川がぜんぶつながって、一匹の長い長い生き物になる。見えるのはひげの先だけ。体の残りは淀川から海までつづいているらしい。
元ネタ / テーマ龍神・淀川の治水史 / 水はすべてつながっている(流域という考え方)
しっぽをくわえて輪になり、ころころ転がる。通ったあとは、なぜかなつかしいにおいがする。ここが貨物駅だったころの朝のにおいだ、という人もいる。
元ネタ / テーマウロボロス・旧梅田貨物駅 / 時間は輪か、直線か——土地の過去と未来
50年後のうめきたの森からあそびに来た子。いまの森を見て「ちっちゃ!」と笑い、それから木を1本ずつ、とてもだいじそうになでて帰る。
元ネタ / テーマ世代間倫理・森は育つ / 未来はいまの森の子ども——この森の50年後を想像させる
しずけさが すこしずつ かたまって うまれた、苔むす小さな精である。大きな耳で、森のいちばん小さな音をあつめている。さわがしい人の前には、ぜったいに出てこない。
元ネタ / テーマ「しじま」=静寂の古語 / 観測者が静止して初めて現れる存在 / 静けさは“無”ではなく、集められた音のかたまりだという見立て
空のたかいところから、まちをのぞいている天体の子である。夜、真上をずっと見上げていると、むこうも のぞきかえしてくる。おなかの星のあなは、そらの向こうがわに つながっているらしい。
元ネタ / テーマ日本初のプラネタリウムは1937年・大阪四ツ橋に生まれた / 星が見えない街ほど星をのぞく装置を発明する / 見る側と見られる側の反転
ぐるぐるの殻をせおった、うずまきの精である。だれかがその場でくるっと回ると、足もとに「めまい」をもらいにやってくる。もらった めまいは、殻にまいて だいじにしまっておくのだ。
元ネタ / テーマ内耳の渦巻き器官「蝸牛(かぎゅう)」=カタツムリの名を持つ器官 / 殻の対数螺旋は大阪層群のアンモナイトと同じ設計 / めまいの正体は体内の小さな渦
この土地の、いちばんふるい ぬしである。ここが「埋田」とよばれた田んぼのころから、泥と水のなかで まちを見まもってきた。すべての生きものと友だちになった人の前にだけ、ゆっくりとあらわれる。
元ネタ / テーマ梅田の語源は「埋田」=低湿地を埋め立てた田(実話) / 頭の芽は万物を生み成す古い力の名「産霊(むすひ)」 / 田 → 貨物駅 → 森と姿を変えた土地の履歴そのもの