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放課後等デイサービスの虐待通報義務|「発見したら市町村へ」障害者虐待防止法16条・22条を確認する(2026年8月時点)

公開 2026-08-30 最終更新 2026-08-30 文責 合同会社ヌルセット

放デイの虐待対応というと、指定基準(省令)が求める虐待防止委員会・研修を思い浮かべる方が多いはずです。しかし、それとは別に、障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律(平成23年法律第79号。以下「障害者虐待防止法」)は、虐待を受けたと思われる障害者を発見した者に、市町村等への通報義務を課しています。根拠法も義務の性質もまったく別物です。

この記事では、放デイの現場に関わる2つの通報義務――障害者福祉施設従事者等による虐待の通報(第16条)と、使用者による虐待の通報(第22条)――を、条文レベルで整理します。

この記事でわかること

  1. 「施設内部の防止委員会・研修」(省令)と「発見時の外部通報義務」(障害者虐待防止法)は別の法律に基づく別の義務であること
  2. 従業者が利用児童への虐待を発見した場合の通報義務(第16条):通報先・通報要件
  3. 事業者が障害のある職員を虐待した場合の通報義務(第22条):第16条との違い
  4. 通報者を守る守秘義務との関係不利益取扱いの禁止の条文
  5. 通報を受けた市町村・都道府県が行う措置の流れ

1. まず区別する:委員会・研修(省令)と通報義務(障害者虐待防止法)は別の話

放デイの指定基準(児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準)第45条は、虐待防止委員会の定期開催・研修の実施・担当者の配置を求めています。これは事業所が未然に虐待を防ぐための内部体制の話です(詳しくは姉妹記事「放課後等デイサービスの虐待防止・身体拘束等適正化」を参照してください)。

一方、本記事が扱う障害者虐待防止法第16条・第22条は、実際に虐待(またはその疑い)を発見した人が、その場でどう動くべきかという発見時の外部通報義務です。委員会を年1回開いているかどうかとは無関係に、虐待を発見した瞬間に発生する個人の義務であり、両者は根拠条文も適用のタイミングも異なります。


2. 障害者福祉施設従事者等による虐待の通報(第16条)

条文

障害者福祉施設従事者等による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに、これを市町村に通報しなければならない。(第16条第1項)

(出典:e-Gov法令検索「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」第16条第1項)

放デイの職員は対象になるか

対象になります。同法第2条第4項は「障害者福祉施設従事者等」を、障害者支援施設等のほか「障害福祉サービス事業等(厚生労働省令で定める事業を含む)」に従事する者と定義しており、同法施行規則第1条が、この「厚生労働省令で定める事業」を児童福祉法第6条の2の2第1項に規定する障害児通所支援事業(放デイを含む)と定めています(出典:e-Gov法令検索「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律施行規則」第1条)。したがって放デイの従業者が利用児童への虐待を行った場合、これは第2条第7項の「障害者福祉施設従事者等による障害者虐待」に該当し、発見者は第16条の通報義務を負います。なお同法上「障害者」に年齢の下限はなく(障害者基本法第2条第1号の定義を準用)、放デイの利用児童も対象に含まれます。

通報の要件と保護

(出典:e-Gov法令検索 同法第16条第3項・第4項)

市町村が通報・届出を受けたときは、厚生労働省令の定めるところにより当該事業所の所在地の都道府県に報告します(第17条)。市町村・都道府県の職員には、通報者を特定させる事項の守秘義務が課され(第18条)、市町村長・都道府県知事は関係法律の権限を行使して防止・保護・自立支援を図ります(第19条)。


3. 使用者による虐待の通報(第22条)——第16条とは対象が違う

見落とされがちですが、放デイ事業者が障害のある職員を雇用している場合、その職員に対する虐待は第16条ではなく、第22条「使用者による障害者虐待に係る通報等」の対象です。

条文

使用者による障害者虐待を受けたと思われる障害者を発見した者は、速やかに、これを市町村又は都道府県に通報しなければならない。(第22条第1項)

(出典:e-Gov法令検索 同法第22条第1項)

第16条との主な違いは次のとおりです。

項目 第16条(施設従事者等による虐待) 第22条(使用者による虐待)
虐待の主体 障害者福祉施設従事者等(放デイ職員等) 使用者(障害者を雇用する事業主等)
被害を受ける側 施設利用者(利用児童) 雇用されている障害のある労働者
通報先 市町村のみ 市町村又は都道府県
通報後の流れ 市町村→都道府県(第17条) 市町村・都道府県→都道府県労働局(第23条・第24条)
不利益取扱い禁止の対象 障害者福祉施設従事者等(第16条第4項) 労働者(第22条第4項、通報者が労働者一般)
守秘義務との関係 通報を妨げない(第16条第3項) 通報を妨げない(第22条第3項)

(出典:e-Gov法令検索 同法第16条・第17条・第22条〜第24条)

つまり放デイに置き換えると――利用児童への虐待を職員が見つけたら第16条(市町村へ)、障害のある同僚職員に対する事業主側の虐待を見つけたら第22条(市町村または都道府県へ)と、通報先も条文も切り替わります。両方を「同じ通報」と一括りにしないことが実務上のポイントです。

通報・届出を受けた市町村は使用者の事業所所在地の都道府県に通知し(第23条)、都道府県はさらに事業所所在地を管轄する都道府県労働局に報告します(第24条)。都道府県労働局長・労働基準監督署長・公共職業安定所長は、労働基準法等の権限を行使して防止・保護・自立支援を図ります(第26条)。


4. 通報者保護のまとめ

第16条・第22条に共通する保護の骨格は次の2点です。

  1. 守秘義務は通報の妨げにならない(第16条第3項・第22条第3項)。虚偽または過失による通報は対象外です。
  2. 通報を理由とする不利益取扱いの禁止(第16条第4項・第22条第4項)。ただし保護の対象範囲が異なり、第16条は「障害者福祉施設従事者等」、第22条は「労働者」です。

これらはいずれも障害者虐待防止法本体の条文であり、放デイの指定基準(省令)には規定がありません。委員会規程や研修資料に通報フローを記載する際は、根拠法名(障害者虐待防止法)と条番号を分けて明記しておくと、後から見返したときに省令上の措置と混同しません。


5. 放デイ現場向けチェックリスト


出典一覧(すべて2026-08-18に参照)


免責事項

本記事は制度の理解を助けるための一般的な情報提供であり、行政書士・社会保険労務士等の独占業務の代行ではありません。ひな形・記入例はそのまま提出できるものではなく、各事業所の実態に合わせた編集が必要です。運営指導の結果・加算の取得・減算の回避を保証するものではありません。制度は改正されます。必ず指定権者(都道府県・市)およびこども家庭庁等の最新の公表資料をご確認ください。

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