放課後等デイのセクハラ・マタハラ防止措置|均等法11条・11条の3、育介法25条(中小企業の猶予規定は一次情報で確認できず)の社内対応チェック
放デイの「職場のハラスメント対策」というと、既存記事「放課後等デイのパワーハラスメント防止措置」(pawahara-boushi.md、第6波)で扱った労働施策総合推進法第30条の2(職員間・上司部下間のパワーハラスメント、2022年4月1日から中小企業も義務化済み)がまず思い浮かびますが、それとは根拠法も指針も別の措置が2つあります。男女雇用機会均等法第11条・第11条の3(職場のセクシュアルハラスメント、妊娠・出産等に関するハラスメント)と、育児・介護休業法第25条(育児休業等に関するハラスメント、いわゆる育休マタハラ)です。この記事はこの2つの法律・3つの条文に絞り、一次情報で整理します。
この記事でわかること
- 根拠条文(均等法第11条・第11条の3、育介法第25条)の条文そのもの
- パワハラ(第30条の2)とは適用開始時期が違うこと — 中小企業への猶予期間は、一次情報の範囲では確認できない
- 事業主が講じなければならない10項目(マタハラ・育休ハラは+1項目の計11項目)の措置
- 根拠となる4本の厚労省指針(告示)とその番号・最終改正
- 既存記事(パワハラ防止措置)との混同しやすいポイントの整理
- 準備・点検のためのチェックリスト
根拠条文 — 均等法11条・11条の3、育介法25条
根拠は次の3条文です(出典: e-Gov法令検索・法令API、いずれも現行条文)。
均等法第11条(職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等) — セクハラ
事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。 2 事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。 3 事業主は、他の事業主から当該事業主の講ずる第一項の措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならない。
均等法第11条の3(職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等) — 妊娠・出産等ハラスメント(マタハラの一部)
事業主は、職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。 2 第十一条第二項の規定は、労働者が前項の相談を行い、又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べた場合について準用する。
育児・介護休業法第25条(職場における育児休業等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等) — 育休等関係言動(育休マタハラ)
事業主は、職場において行われるその雇用する労働者に対する育児休業、介護休業その他の子の養育又は家族の介護に関する厚生労働省令で定める制度又は措置の利用に関する言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。 2 事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
いずれも「講じなければならない」という義務規定であり、相談したこと等を理由とする不利益取扱いの禁止も条文に定められています。均等法第11条の2・育介法第25条の2は、国・事業主・労働者それぞれの「責務」(努力義務)を定めた別条文で、措置義務そのものではありません。
中小企業への猶予規定は確認できず — パワハラ(第30条の2)との決定的な違い
既存記事のパワハラ防止措置(労働施策総合推進法第30条の2)は、2019年の法改正で大企業に先行して義務化され、中小事業主は2022年3月31日までの努力義務期間を経て2022年4月1日から完全義務化された、という経過をたどりました。
一方、セクハラ(均等法11条)・マタハラ(均等法11条の3・育介法25条)の措置義務には、この記事で確認した一次情報(厚生労働省パンフレット、e-Gov条文)の範囲では、中小事業主に対する努力義務期間・経過措置は見当たりません。厚労省パンフレットも「相談等を理由とした不利益取扱い禁止」の説明箇所で、パワハラの雇用管理上の措置が努力義務にとどまる中小事業主であっても不利益取扱い禁止は同様に適用される、という書き方をしており、セクハラ・マタハラの措置義務そのものが企業規模を問わず適用されることを前提とした記述になっています。
これは、労働施策総合推進法におけるパワーハラスメントの雇用管理上の措置を講じることが努力義務である中小事業主の場合でも同様です。 (出典: 厚生労働省パンフレット「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました! 〜セクシュアルハラスメント対策や妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策とあわせて〜」)
つまり、放デイのような小規模福祉事業所であっても、セクハラ・マタハラ防止措置は「規模が小さいから猶予される」対象ではありません。この点は本記事とパワハラ記事とで最も混同しやすいポイントです。
※ セクハラの措置義務化そのものの歴史的な施行日(2007年4月1日、との解説が複数の民間サイトに見られます)は、本セッションで一次情報(官報・改正法附則)を直接確認できておらず、未確認として扱います。断定できるのは、現行の均等法11条・11条の3・育介法25条が企業規模を問わない義務規定であり、指針(後述)が令和2年6月1日(育休関係は令和4年10月1日)時点で適用されているという事実までです。
指針(告示)一覧 — 4本の厚労省告示
事業主が講ずべき措置の具体的内容は、それぞれ次の厚生労働大臣告示(指針)に定められています(出典: 厚生労働省パンフレット掲載の告示全文)。
| 指針 | 告示番号 | 最終改正・適用時点 |
|---|---|---|
| 職場における性的言動に起因する問題に関する雇用管理上講ずべき措置等についての指針 | 平成18年厚生労働省告示第615号 | 最終改正: 令和2年厚労告6号(令和2年6月1日適用時点) |
| 職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関する雇用管理上講ずべき措置等についての指針 | 平成28年厚生労働省告示第312号 | 最終改正: 令和2年厚労告6号(令和2年6月1日適用時点) |
| 子の養育又は家族の介護を行う労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針(育休等関係言動部分) | 平成21年厚生労働省告示第509号 | 最終改正: 令和3年厚労告366号(令和4年10月1日適用時点) |
| (参考)職場におけるパワーハラスメント防止のための指針 | 令和2年厚生労働省告示第5号 | 既存記事参照 |
事業主が講じなければならない10(セクハラ)〜11(マタハラ・育休ハラ)項目の措置
セクハラとマタハラ・育休ハラでは、共通する10項目に加えて、マタハラ・育休ハラには「原因や背景となる要因を解消するための措置」が1項目追加されます(出典: 厚労省パンフレットP20〜21の対比表)。
| 項目 | 措置の内容(要旨) | セクハラ | マタハラ・育休ハラ |
|---|---|---|---|
| 1 | ハラスメントの内容・行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発(マタハラ・育休ハラは「制度等の利用ができること」の周知も含む) | ○ | ○ |
| 2 | 行為者への厳正な対処方針・内容を就業規則等の文書に規定し周知・啓発 | ○ | ○ |
| 3 | 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知 | ○ | ○ |
| 4 | 相談窓口担当者が、発生のおそれがある場合や該当するか微妙な場合も含め、内容・状況に応じ適切に対応できるようにする | ○ | ○ |
| 5 | 事実関係の迅速かつ正確な確認 | ○ | ○ |
| 6 | 事実確認ができた場合、被害者に対する配慮の措置を適正に行う | ○ | ○ |
| 7 | 事実確認ができた場合、行為者に対する措置を適正に行う | ○ | ○ |
| 8 | 再発防止に向けた措置 | ○ | ○ |
| 9 | 相談者・行為者等のプライバシー保護のための措置を講じ周知 | ○ | ○ |
| 10 | 相談・事実確認への協力等を理由とした不利益取扱いをされない旨を定め周知・啓発 | ○ | ○ |
| 11 | 業務体制の整備など、原因や背景となる要因を解消するための措置(妊娠等した労働者・事業主・他の労働者の実情に応じて) | — | ○(マタハラ・育休ハラのみ) |
このうち1・2は「予防」、3〜4は「相談体制の整備」、5〜8は「事後対応」、9・10は「併せて講ずべき措置」、11(マタハラ・育休ハラのみ)は「原因・背景の解消」という5つのまとまりで理解すると実務に落としやすくなります。既存記事のパワハラ10項目と項目立ての骨格は似ていますが、根拠指針が別であるため、就業規則・相談窓口を整備する際は「パワハラ」「セクハラ・マタハラ」を同じ条文の話として一体化しないよう注意が必要です(窓口・様式そのものは共通化して構いませんが、規程上の根拠条文は書き分けるべきです)。
パワハラ記事との違い — 混同しないための整理
| セクハラ・マタハラ防止措置(本記事) | パワーハラスメント防止措置(既存記事) | |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 均等法第11条・第11条の3、育介法第25条 | 労働施策総合推進法第30条の2 |
| 想定する言動 | 性的な言動、妊娠・出産・育児休業等の利用に関する言動 | 優越的な関係を背景とした言動 |
| 中小企業への猶予期間 | 一次情報の範囲では確認できず(適用が猶予される旨の記載なし) | あり(2022年3月31日まで努力義務、2022年4月1日から完全義務化) |
| 指針(告示) | 平成18年厚労告615号/平成28年厚労告312号/平成21年厚労告509号 | 令和2年厚労告5号 |
| 措置項目数 | 10項目(セクハラ)/11項目(マタハラ・育休ハラ) | 10項目 |
同じ「ハラスメント対策研修」という括りで語られがちですが、根拠条文も指針(告示)も別です。就業規則やハラスメント防止規程を整備する際は、この記事とパワハラ記事の両方の措置を、それぞれの根拠条文に対応づけて個別に確認する必要があります。
準備・点検チェックリスト
- □ セクハラ・マタハラ・育休ハラを行ってはならない旨の方針を就業規則等に規定し、労働者に周知・啓発している(項目1)
- □ 行為者への厳正な対処方針を就業規則等に規定し、周知・啓発している(項目2)
- □ 相談窓口(担当者・連絡先)をあらかじめ定め、全労働者に周知している(項目3)
- □ 相談窓口担当者が、発生のおそれがある段階・該当するか微妙な場合も含めて対応できる体制を整えている(項目4)
- □ 相談があった場合、迅速かつ正確に事実確認を行う手順を決めている(項目5)
- □ 事実確認後の被害者への配慮措置・行為者への措置・再発防止措置の流れを定めている(項目6〜8)
- □ 相談者・行為者等のプライバシー保護措置と、その旨の周知を行っている(項目9)
- □ 相談・協力を理由とする不利益取扱いをしない旨を定め、周知している(項目10)
- □ マタハラ・育休ハラについては、業務体制の整備など原因・背景を解消する措置も別途講じている(項目11)
- □ パワハラ防止措置(第30条の2)・カスタマーハラスメント対策(第33条)とは別の根拠条文として整理されているか確認した(規程上の条文引用を混在させていないか)
よくある誤解を2つ
1) 放デイは小規模だから、セクハラ・マタハラ対策も努力義務にとどまる パワハラ防止措置(第30条の2)には中小事業主の努力義務期間(2022年3月31日まで)がありましたが、本記事で確認したセクハラ・マタハラの措置義務(均等法11条・11条の3、育介法25条)には、そのような猶予規定は一次情報の範囲では見当たりません。企業規模を理由に対応を先延ばしにできる根拠は確認できていません。
2) ハラスメント対策研修を1本やれば、パワハラ・セクハラ・マタハラすべてに対応したことになる 根拠条文(第30条の2と、11条・11条の3・25条)が別であるため、研修の内容としてまとめて扱うこと自体は可能ですが、就業規則・相談窓口の規程上の根拠条文は書き分けて整理する必要があります。
出典一覧(すべて2026年8月18日参照)
- e-Gov法令検索・法令API「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(昭和47年法律第113号、法令ID
347AC0000000113) https://laws.e-gov.go.jp/law/347AC0000000113 (法令データ取得: https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/347AC0000000113?response_format=xml ) - 第11条(セクハラ・雇用管理上の措置等)、第11条の2(責務)、第11条の3(妊娠、出産等に関するハラスメント・雇用管理上の措置等)
- e-Gov法令検索・法令API「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号、法令ID
403AC0000000076) https://laws.e-gov.go.jp/law/403AC0000000076 (法令データ取得: https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/403AC0000000076?response_format=xml ) - 第25条(育児休業等関係言動・雇用管理上の措置等)、第25条の2(責務)
- 厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました! 〜セクシュアルハラスメント対策や妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策とあわせて〜」 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf
- セクハラ・マタハラ・育休ハラの10〜11項目の措置、4本の指針(告示)番号・最終改正・適用時点、中小事業主の猶予がパワハラ固有である旨の記述
- 厚生労働省「職場のセクシュアルハラスメント 妊娠・出産等ハラスメント 防止のためのハンドブック」 https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000474782.pdf
- セクハラ・妊娠出産等ハラスメントの定義・種類の参考(条番号表記に一部揺れがあり、条文そのものはe-Gov情報を優先して採用)
免責
- 本記事は放課後等デイサービス事業者向けの一般的な情報提供です。セクハラ措置義務化の歴史的な起点(2007年4月1日、との解説が民間サイトに見られる件)は本セッションで官報等の一次情報を直接確認できておらず、未確認としています。
- 中小事業主への猶予規定が「存在しない」という記載は、本記事で参照した厚労省パンフレット・e-Gov条文の範囲で猶予規定の記載が見当たらなかったことを根拠とするものであり、他の未確認の経過措置政令等の存在を完全に否定するものではありません。実務適用にあたっては所管の都道府県労働局雇用環境・均等部(室)への確認を推奨します。
- 本記事および当社の提供物は、社会保険労務士等の独占業務の代行ではありません。効果や法令適合、行政指導の回避を保証するものではありません。
自分で作るなら、この記事の手順で足ります
10〜11項目の措置を1つずつ確認し、就業規則・相談窓口・周知方法を整える作業は、この記事のチェックリストをそのまま使えば自事業所の情報を書き込むだけで進められます。特別なツールは要りません。
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※収録物の記入例・ひな形はそのまま使えるものではなく、貴事業所の実情に合わせた編集が必要です。士業の独占業務の代行ではなく、実地指導の結果・加算取得・監査通過を保証するものでもありません。デジタル商品のためダウンロード後の返金はお受けできません(ファイルの破損・不具合時は再送または返金で対応します)。
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