放課後等デイの秘密保持・個人情報保護|職員退職後も続く義務を条文で確認(第47条)
放課後等デイサービス(以下「放デイ」)の秘密保持というと「在職中に利用児の情報を漏らさない」というイメージが強いですが、条文を確認すると職員が退職した後も事業者側に果たすべき措置義務が続くことが明記されています。また、放デイの秘密保持義務は指定基準(省令)だけでなく、事業規模を問わずすべての事業者に適用される個人情報保護法という別の法律からも同時に規律されています。
この記事では、指定通所支援基準第47条(秘密保持等)と個人情報保護法の関係条文を一次情報で確認し、放デイが実務上押さえるべきポイントを整理します。
この記事でわかること
- 根拠条文(指定通所支援基準第47条・基準第71条において準用)の3項の内容
- 職員退職後も事業者に必要な措置を講じる義務が続くという条文上の根拠(第2項)
- 他の福祉サービス事業者等へ情報提供する際の文書同意の要件(第3項)
- 個人情報保護法が定める安全管理措置(第23条)・従業者の監督(第24条)
- 個人情報保護法には小規模事業者を除外する規定がないという条文上の事実
- 放デイが扱う情報が要配慮個人情報に該当し得るという整理
- 厚生労働省「福祉分野における個人情報保護に関するガイドライン」が放デイを名指しで対象に含むこと
- 準備のためのチェックリスト
根拠条文 — 指定通所支援基準第47条(基準第71条において準用)
根拠は「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成24年厚生労働省令第15号。以下「指定通所支援基準」)第47条(秘密保持等)です。この条文は第2章(児童発達支援)に置かれていますが、放デイには第71条(準用)により、正確には「基準第71条において準用する第47条」が根拠になります(出典: e-Gov法令検索 指定通所支援基準)。
条文は3項構成です(出典: 同条文)。
| 項 | 求められること |
|---|---|
| 第1項 | 従業者及び管理者は、正当な理由なく、業務上知り得た障害児又はその家族の秘密を漏らしてはならない |
| 第2項 | 事業者は、従業者及び管理者であった者が正当な理由なく秘密を漏らすことがないよう、必要な措置を講じなければならない |
| 第3項 | 他の福祉サービス提供者等に障害児又はその家族の情報を提供する際は、あらかじめ文書により当該障害児又はその家族の同意を得ておかなければならない |
「職員であった者」= 退職後も続く措置義務(第2項)
第2項の条文(要旨)は次のとおりです(出典: 同条文)。
指定児童発達支援事業者は、従業者及び管理者であった者が、正当な理由がなく、その業務上知り得た障害児又はその家族の秘密を漏らすことがないよう、必要な措置を講じなければならない。
第1項が「現に在職する従業者及び管理者」の禁止行為を定めているのに対し、第2項は「従業者及び管理者であった者」、つまり退職者を含む文言になっています。義務の主体は事業者側で、退職者本人を直接処罰する規定ではありませんが、事業者は退職後も秘密が漏れないよう必要な措置を講じる義務を負うという条文構造です。実務上は、誓約書の取得(在職中・退職時双方)、研修での周知、退職時の説明などが「必要な措置」の具体例として想定されますが、条文自体は具体的な手段までは指定していません。
第三者への情報提供は文書同意が必須(第3項)
第3項は次のとおりです(出典: 同条文)。
指定児童発達支援事業者は、指定障害児入所施設等、指定障害福祉サービス事業者等その他の福祉サービスを提供する者等に対して、障害児又はその家族に関する情報を提供する際は、あらかじめ文書により当該障害児又はその家族の同意を得ておかなければならない。
他機関との連携(相談支援事業者への個別支援計画の共有、転所先施設への引き継ぎ等)で障害児・家族の情報を提供する場合、口頭同意では足りず、あらかじめ文書による同意が必要です。個別支援計画の交付・モニタリングの過程で他事業者との情報共有が発生する場面では、この文書同意の有無を都度確認する必要があります。
個人情報保護法 — 指定基準とは別の法律による規律
第47条が放デイの指定基準(行政処分の対象になり得る規制)であるのに対し、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号。以下「個人情報保護法」)は、事業の種類・規模を問わず適用される別の法律です(出典: e-Gov法令検索 個人情報保護法)。
安全管理措置と従業者の監督
第二十三条(安全管理措置) 個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又は毀損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない。 第二十四条(従業者の監督) 個人情報取扱事業者は、その従業者に個人データを取り扱わせるに当たっては、当該個人データの安全管理が図られるよう、当該従業者に対する必要かつ適切な監督を行わなければならない。
「個人情報取扱事業者」に小規模事業者の除外規定はない
個人情報保護法第16条第2項は「個人情報取扱事業者」を「個人情報データベース等を事業の用に供している者」と定義し、除外されるのは国の機関・地方公共団体・独立行政法人等・地方独立行政法人のみです(出典: 同法第16条)。取り扱う個人情報の件数による除外規定は条文上存在しません。 かつては5,000件以下の事業者を適用除外とする規定がありましたが、この規定は既に廃止されており、現行条文にその文言はありません。放デイのような小規模事業者であっても、利用児・家族の名簿を電子的に検索可能な状態で管理していれば、個人情報保護法上の個人情報取扱事業者に該当します。
退職者による不正提供・盗用には刑事罰もある
個人情報保護法第179条は、個人情報取扱事業者の従業者又はこれらであった者が、業務に関して取り扱った個人情報データベース等を不正な利益を図る目的で提供・盗用した場合、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処すると定めています(出典: 同法第179条)。指定基準第47条第2項が「事業者側の措置義務」であるのに対し、こちらは退職者本人にも刑事罰が及び得る規定である点が異なります。
放デイが扱う情報は「要配慮個人情報」に該当し得る
個人情報保護法第2条第3項は、要配慮個人情報を「本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴…その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報」と定義しています(出典: 同法第2条第3項)。放デイが扱う障害の種類・程度、療育手帳・受給者証の情報等は、この要配慮個人情報に該当し得る性質のものであり、取得・第三者提供にあたって通常の個人情報より慎重な取扱いが求められます。
厚生労働省「福祉分野における個人情報保護に関するガイドライン」
厚生労働省は平成25年3月付で「福祉分野における個人情報保護に関するガイドライン」を公表しており、適用対象者の範囲として次のように明記しています(出典: 同ガイドライン)。
このガイドラインは、社会福祉法第2条…に規定する社会福祉事業を実施する個人情報取扱事業者を対象とする。具体的には、保護施設、障害者支援施設、婦人保護施設、児童福祉施設、母子福祉施設、授産施設、隣保館、へき地保健福祉館、へき地保育所、地域福祉センター、障害福祉サービス事業、障害児通所支援事業などの社会福祉事業を実施する個人情報取扱事業者である。
さらに「従業者の監督」の章では、関係各法において守秘義務が設けられている例として「指定放課後等デイサービス事業所の従業者及び管理者(指定通所支援等基準第71条)」を名指しで列挙しています。放デイがこのガイドラインの直接の対象であることが一次情報で確認できます。なお、高齢者福祉サービス(介護保険法・老人福祉法関係)については別の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」が定められており、放デイを含む障害児通所支援は上記の福祉分野ガイドラインの対象という整理です。
準備・点検チェックリスト
- □ 従業者に対し、業務上知り得た障害児・家族の秘密を漏らさない旨の誓約書を在職中に取得している
- □ 退職時にも秘密保持に関する説明・誓約書等、必要な措置を講じる運用がある(第47条第2項)
- □ 他の福祉サービス提供者等へ障害児・家族の情報を提供する際、あらかじめ文書による同意を得る運用になっている(第47条第3項)
- □ 個人データ(利用児・家族名簿等)の安全管理措置(アクセス制限・施錠保管・データの暗号化等)を講じている(個人情報保護法第23条)
- □ 個人データを取り扱う従業者への教育・監督を行っている(個人情報保護法第24条)
- □ 障害の種類・程度等、要配慮個人情報に該当し得る情報の取得・第三者提供について、通常の個人情報より慎重な同意取得を行っている
- □ 個人データの漏えい等が発生した場合の報告体制(個人情報保護委員会への報告・本人への通知)を把握している(個人情報保護法第26条)
よくある誤解を3つ
1) 秘密保持義務は在職中だけの話である 指定基準第47条第2項は「従業者及び管理者であった者」の秘密漏えいを防ぐため事業者が必要な措置を講じる義務を、退職後についても定めています。在職中の誓約書だけで終わりにせず、退職時の対応も含めて体制を整える必要があります。
2) 小規模な放デイ事業所は個人情報保護法の対象外である かつて存在した5,000件以下の事業者を適用除外とする規定は既に廃止されており、現行の個人情報保護法にその規定はありません。事業規模にかかわらず、個人情報データベース等を事業の用に供していれば個人情報取扱事業者に該当します。
3) 個人情報保護法さえ守れば指定基準の秘密保持義務は別途考えなくてよい 指定基準第47条(行政処分の対象になり得る規制)と個人情報保護法(全事業者に適用される別の法律で、個人情報保護委員会が所管)は、根拠法も監督機関も異なる別々の義務です。両方を満たす必要があります。
出典一覧(すべて2026年8月14日参照)
- e-Gov法令検索・法令API「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成24年厚生労働省令第15号) https://laws.e-gov.go.jp/law/424M60000100015 (現行revisionの本文をAPIで直接取得・確認: https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/424M60000100015_20251001_507M60000002080?response_format=xml )
- 第47条(秘密保持等)、第71条(準用)
- e-Gov法令検索・法令API「個人情報の保護に関する法律」(平成十五年法律第五十七号) https://laws.e-gov.go.jp/law/415AC0000000057 (現行revisionの本文をAPIで直接取得・確認: https://laws.e-gov.go.jp/api/2/law_data/415AC0000000057_20260717_508AC0000000062?response_format=xml )
- 第2条第3項(要配慮個人情報の定義)、第16条(個人情報取扱事業者の定義)、第23条(安全管理措置)、第24条(従業者の監督)、第26条(漏えい等の報告等)、第179条(不正提供罪)
- 厚生労働省「福祉分野における個人情報保護に関するガイドライン」(平成25年3月) https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/seisaku/kojin/dl/250329fukusi.pdf
- 個人情報保護委員会 よくある質問「障害福祉サービス事業者等において個人情報を取り扱う際に、留意すべきことはありますか。」 https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q1-35/
免責
- 本記事は放課後等デイサービス事業者向けの一般的な情報提供です。「必要な措置」の具体的な内容(誓約書の様式・研修の頻度等)は、事業所の実情や指定権者の指導内容によって異なり得るため、必ず個別に検討してください。
- 本記事に記載した条番号は、2026年8月14日時点でe-Gov法令APIから確認したものです。制度は改正されるため、実務適用前に必ず原典で再確認してください。
- 本記事および当社の提供物は、弁護士・社会保険労務士等の独占業務の代行ではありません。効果や法令適合、行政指導の回避を保証するものではありません。
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※収録物の記入例・ひな形はそのまま使えるものではなく、貴事業所の実情に合わせた編集が必要です。士業の独占業務の代行ではなく、実地指導の結果・加算取得・監査通過を保証するものでもありません。デジタル商品のためダウンロード後の返金はお受けできません(ファイルの破損・不具合時は再送または返金で対応します)。
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