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放課後等デイサービスのBCP(業務継続計画)義務化はいつから?|未策定減算・研修・訓練・見直しまで実務手順で解説

公開 2026-07-23 最終更新 2026-07-23 文責 合同会社ヌルセット

放課後等デイサービス(以下「放デイ」)では、感染症や自然災害が起きても支援を止めない・早く再開するための「業務継続計画(BCP)」の策定が、運営基準上の義務になっています。さらに令和6年度の障害福祉サービス等報酬改定で「業務継続計画未策定減算」が新設され、作っていないこと自体が報酬に直接響く仕組みになりました。

この記事は、放デイの管理者・児童発達支援管理責任者(児発管)が、条番号・施行日・減算率を一次情報で確認したうえで、自分の事業所のBCPを回せる状態にするための実務ガイドです。放デイは児童福祉法に基づく障害児通所支援であり、所管はこども家庭庁です。介護保険の介護事業所向けルール(頻度・様式)とは異なる点があるため、本記事は障害児通所支援の基準・通知だけを根拠にしています。

この記事でわかること


放デイのBCP義務の根拠条文はどこか

放デイの運営基準は「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成24年厚生労働省令第15号。以下「指定通所支援基準」)です。

BCPの規定は第38条の2(業務継続計画の策定等)に置かれています。条文は次の3項構成です(出典: e-Gov法令検索 指定通所支援基準 第38条の2)。

条文の要旨(原文の要点)
第1項 感染症や非常災害の発生時において、利用者に対する提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(=業務継続計画)を策定し、当該業務継続計画に従い必要な措置を講じなければならない
第2項 従業者に対し、業務継続計画について周知するとともに、必要な研修及び訓練を定期的に実施しなければならない
第3項 定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて変更を行うものとする

第38条の2は条文上は「指定児童発達支援事業者」を主語にしていますが、放デイには第71条(準用)が働きます。第71条は「第十二条から第二十二条まで、第二十四条から第三十条まで、第三十二条、第三十四条から第四十五条まで、第四十七条から第五十条まで…の規定は、指定放課後等デイサービスの事業について準用する」と定めており、第38条の2はこの範囲に入ります(出典: e-Gov法令検索 指定通所支援基準 第71条)。

つまり放デイのBCP義務は「基準第71条において準用する第38条の2」が正確な引用の仕方です。実地指導(運営指導)の指摘文書や自主点検表でもこの形で書かれることがあります。

義務化はいつから? 経過措置は令和6年3月31日で終了済み

BCP義務は令和3年度の基準改正で入り、3年間の経過措置が付いていました。

(出典: e-Gov法令検索 指定通所支援基準 附則(令和三年一月二五日厚生労働省令第一〇号)第1条・第3条)

こども家庭庁の解釈通知も同趣旨で、「令和3年改正省令附則第3条において、3年間の経過措置を設けており、令和6年3月31日までの間は、努力義務とされている」と旧規定を説明したうえで、令和6年度改正でこの経過措置の記述を削除しています(出典: こども家庭庁「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」新旧対照表 (28)業務継続計画の策定等)。

結論: 放デイのBCPは令和6年4月1日から完全に義務です。「まだ作っていない」は現時点で基準違反の状態にあたります。

業務継続計画未策定減算 — 放デイは所定単位数の100分の1

令和6年度障害福祉サービス等報酬改定で「業務継続計画未策定減算」が新設されました。障害児通所支援側の内容は、こども家庭庁の留意事項通知(平成24年3月30日障発0330第16号。最終改正 こ支障第88号 令和8年3月31日)の(12)業務継続計画の策定等の取組が適切に行われていない場合の所定単位数の算定についてに規定されています。この通知は令和6年3月29日(こ支障第94号)で減算が新設された後、こ支障第167号(令和6年7月2日)・こ支障第263号(令和7年6月13日)・こ支障第88号(令和8年3月31日)と改正が重ねられているため、原典を見るときは必ず最新の「改正後全文」を参照してください

項目 内容(留意事項通知(12)。現行=令和8年3月31日改正後全文)
対象となる支援 児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援、障害児入所支援、障害児相談支援、共生型障害児通所支援、基準該当通所支援
減算率(放デイ) 所定単位数の100分の1に相当する単位数を所定単位数から減算(障害児入所支援は100分の3)
減算の期間 基準に基づき求められる業務継続計画の策定及び当該計画に従い必要な措置を講じていない事実が生じた場合に、その翌月から基準に満たない状況が解消されるに至った月まで、当該事業所の利用者全員について減算

経過措置はすでに終了しています。令和6年度改定時の留意事項通知(12)には④として、「令和7年3月31日までの間、『感染症の予防及びまん延防止のための指針の整備』及び『非常災害に関する具体的計画』の策定を行っている場合には、当該減算を適用しない」という経過措置が置かれていました。この④は期間満了に伴い、現行の改正後全文(令和8年3月31日改正後)では条文ごと削除されています(こども家庭庁「留意事項通知(改正後全文)」で確認)。

つまり放デイの場合、令和7年4月1日以降は「感染症指針+非常災害の具体的計画がある」だけでは減算を回避できません。BCPそのものが必要です。

減算は「見つかった月」からではなく「事実が生じた月」から

令和6年度報酬改定Q&A VOL.1(令和6年3月29日)問15は、この減算の適用時点を明示しています。

業務継続計画未策定減算については、行政機関が運営指導等で不適切な取り扱いを発見した時点ではなく、「基準を満たさない事実が生じた時点」まで遡及して減算を適用することとなる。

同Q&Aの例では、令和6年10月の運営指導でBCP未策定が判明した場合(かつ感染症指針・非常災害の具体的計画もない場合)、令和6年10月ではなく令和6年4月分の報酬から減算対象になるとされています(出典: 令和6年度障害福祉サービス等報酬改定等に関するQ&A VOL.1 問15)。同問はさらに、令和7年4月から減算対象となるサービスの事業所については令和7年4月分の報酬から対象になる、とも述べています。

放デイでも遡及するという考え方は同じです。どこまで遡るかは経過措置の当てはまり方で変わり、感染症指針と非常災害に関する具体的計画の両方があった事業所は最短でも令和7年4月分から、どちらかを欠く事業所は令和6年4月分まで遡り得るという整理になります。ただし個別事案の遡及範囲は指定権者の判断を伴うため、実際の取扱いは指定権者に確認してください。いずれにせよ「利用者全員 × 遡及」なので、返還額はまとまった金額になり得ます。

減算の要件は「策定+必要な措置」。研修・訓練は減算要件ではないが義務

同Q&A問14は、「感染症若しくは災害のいずれか又は両方の業務継続計画が未策定の場合や、当該業務継続計画に従い必要な措置が講じられていない場合に減算の対象となる」とし、続けて次のように述べています。

業務継続計画の周知、研修、訓練及び定期的な業務継続計画の見直しの実施の有無は、業務継続計画未策定減算の算定要件ではないが、その趣旨を鑑み、これらの業務継続計画の周知等の取組についても適切に実施していただきたい。

減算要件ではない=やらなくてよい、ではありません。周知・研修・訓練・見直しは基準第38条の2第2項・第3項の義務なので、未実施は運営指導での指摘(文書指摘・改善報告)の対象になり得ます。

何を作るのか — 「感染症編」と「自然災害編」の2本立て

解釈通知(28)②は、BCPに記載すべき項目を次のように列挙しています。「感染症及び災害の業務継続計画を一体的に策定することを妨げるものではない」とも明記されているので、1冊にまとめても構いません(章立てを2つに分ける形が実務的です)。

区分 記載項目(解釈通知(28)②)
ア 感染症に係る業務継続計画 a 平時からの備え(体制構築・整備、感染症防止に向けた取組の実施、備蓄品の確保等)/b 初動対応/c 感染拡大防止体制の確立(保健所との連携、濃厚接触者への対応、関係者との情報共有等)
イ 災害に係る業務継続計画 a 平常時の対応(建物・設備の安全対策、電気・水道等のライフラインが停止した場合の対策、必要品の備蓄等)/b 緊急時の対応(業務継続計画発動基準、対応体制等)/c 他施設及び地域との連携

同通知は「想定される災害等は地域によって異なるものであることから、項目については実態に応じて設定すること」ともしています。ハザードマップ上の浸水想定、送迎ルート、学校からの引き取り体制など、放デイ固有の事情(下校時間帯の受け入れ・送迎・学校/保護者との連絡)は自事業所で書き足す必要があります。

厚生労働省のガイドライン・ひな形の所在

解釈通知(28)②は、記載内容について次の2つを参照するよう指示しています。いずれも厚生労働省サイトで公開されており、Word形式のひな形も付いています(こども家庭庁発足前に厚労省が作成したものが、障害児通所支援でも参照先として指定されています)。

感染症編のひな形は「通所系」を選ぶのがポイントです。介護保険のBCPひな形(介護サービス類型)は別物なので、そのまま流用すると用語や体制の記載が実態と合わなくなります。

研修・訓練・見直しの回し方(頻度は一次情報で確認)

解釈通知(28)③④は、BCPに係る研修・訓練の頻度を次のように示しています。

隣接する義務の頻度も併せて押さえておくと、年間計画が組みやすくなります(いずれも解釈通知)。

取組 根拠 頻度(解釈通知の記載)
BCP研修 基準第71条準用第38条の2第2項 定期的(年1回以上)
BCP訓練(シミュレーション) 同上 定期的(年1回以上)
BCPの見直し 同条第3項 「定期的に」(具体的回数の記載は確認できず)
感染症・食中毒の予防及びまん延防止の研修 基準第71条準用第41条第2項第3号 定期的な教育(年2回以上)+新規採用時
感染症の予防及びまん延防止の訓練 同上 定期的(年2回以上)
感染対策委員会 同項第1号 おおむね3月に1回以上、定期的に開催+必要に応じ随時
非常災害の避難・救出訓練 基準第71条準用第40条第2項 「定期的に」(条文上は回数の定めなし)

BCPの見直し頻度非常災害訓練の回数については、指定通所支援基準・解釈通知のいずれにも具体的な回数の定めを確認できませんでした(この2点は本記事では数値を示さず「要確認」として扱います)。訓練の振り返りを反映する形で年度単位に見直す運用が実務上は取り組みやすい一方、自治体(指定権者)によって自主点検表や指導方針が異なるため、都道府県・指定都市・中核市の最新の公表資料で確認してください。消防法に基づく消防計画上の訓練義務は別建てで課される点にも注意が必要です(解釈通知(30)③は「非常災害に関する具体的計画」を消防法施行規則第3条の消防計画+風水害・地震等に対処する計画と定義しています)。

年間の組み方の例(あくまで一例)

運営指導(実地指導)前チェックリスト

そのまま自主点検に使える形にしました。「ある/なし」ではなく「日付と記録の所在」まで書ける状態が目標です。

よくある勘違いを4つ

1) 消防計画・避難確保計画があるからBCPは不要 違います。厚労省の自然災害BCPガイドラインは「防災計画と自然災害BCPの違い」を独立した項目として説明しています。防災計画は人命安全・被害抑制が中心、BCPは優先業務の継続と早期復旧が中心です。基準上も第40条(非常災害対策)と第38条の2(BCP)は別条です。

2) 介護のBCPひな形をそのまま使えばよい 放デイは児童福祉法の障害児通所支援で、所管はこども家庭庁です。解釈通知が参照先に指定しているのは障害福祉サービス事業所等向けのガイドライン・ひな形(通所系)です。介護保険向け様式は用語・体制・頻度が異なるため、少なくとも全面的な書き換えが必要になります。

3) 運営指導で指摘された月から減算されるだけ Q&A問15のとおり、「基準を満たさない事実が生じた時点」まで遡及します。利用者全員が対象なので、影響は「見つかった月の1%」では収まりません。

4) 令和8年度の報酬改定でBCPのルールも変わったはず 令和8年度(2026年度)にも障害福祉サービス等報酬改定は行われていますが、その中身はBCPとは別のテーマです。令和8年2月18日の障害福祉サービス等報酬改定検討チームで取りまとめられた「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」は、福祉・介護職員等処遇改善加算の拡充等令和8年度における臨時応急的な見直しが柱で(告示改正・令和8年6月施行)、業務継続計画に関する記載はありません。

障害児通所支援側の留意事項通知も令和8年3月31日付(こ支障第88号)で改正されていますが、業務継続計画未策定減算(12)については表記の体裁が変わっただけで、放デイの減算率は所定単位数の100分の1のままです(こども家庭庁「留意事項通知(改正後全文)」および同新旧対照表で確認)。

つまり、BCPの枠組み自体は令和6年度改定時点から実質的に変わっていません。ただし告示・通知の一部改正は随時行われるため、こども家庭庁の報酬改定ページと指定権者の通知は定期的に確認してください。


出典一覧(すべて2026-07-23参照)

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