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放課後等デイサービスの虐待防止・身体拘束等適正化|4点セットと3要件・記録の実務(2026年7月時点)

公開 2026-07-23 最終更新 2026-07-23 文責 合同会社ヌルセット

放課後等デイサービス(以下「放デイ」)は、児童福祉法に基づく障害児通所支援であり、所管はこども家庭庁です。介護保険の事業所とは根拠法も基準も別物なので、介護向けの様式や頻度をそのまま流用すると運営指導(実地指導)で指摘の対象になり得ます。

この記事では、放デイの運営基準に定められた虐待防止の4点セット身体拘束等適正化の3点セット+記録義務を、条番号レベルで整理します。数値・条番号はすべて、e-Gov法令検索・こども家庭庁・厚生労働省の公表資料でその場で確認したものだけを掲載しています。

この記事でわかること

  1. 虐待防止・身体拘束等適正化について、放デイに義務づけられている措置の条番号(放デイは準用規定を経由する点がポイント)
  2. 委員会・研修の開催頻度の根拠(「年1回以上」がどこに書いてあるか)
  3. 身体拘束の3要件(切迫性・非代替性・一時性)と、記録に何を書けば基準を満たすのか
  4. 虐待防止措置未実施減算・身体拘束廃止未実施減算の減算率と、減算が発動する具体的な「事実」
  5. 明日から使えるセルフチェックリスト

1. 全体像:放デイで求められる措置の一覧

まず一覧で押さえます。委員会の開催と研修の実施は、いずれも「1年に1回以上」が下限です(記録・運営規程・指針は常時/発生の都度)。

区分 求められる措置 根拠(省令) 頻度・要件
虐待防止 虐待防止委員会の定期開催+結果の周知徹底 第45条第2項第1号 1年に1回以上
虐待防止 従業者への虐待防止研修の定期実施 第45条第2項第2号 年1回以上+新規採用時
虐待防止 措置を適切に実施するための担当者の配置 第45条第2項第3号 専任の担当者(必置)
虐待防止 運営規程に「虐待の防止のための措置に関する事項」を記載 第37条第11号 常時
身体拘束 身体拘束等の禁止(緊急やむを得ない場合を除く) 第44条第1項 常時
身体拘束 身体拘束等を行った場合の記録 第44条第2項 発生の都度
身体拘束 身体拘束適正化検討委員会の定期開催+結果の周知徹底 第44条第3項第1号 1年に1回以上
身体拘束 身体拘束等の適正化のための指針の整備 第44条第3項第2号 常時
身体拘束 身体拘束等の適正化のための研修の定期実施 第44条第3項第3号 年1回以上+新規採用時

(出典:e-Gov法令検索「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成24年厚生労働省令第15号)第37条・第44条・第45条/こども家庭庁掲載「同基準について」(平成24年3月30日障発0330第12号)(34)(35))

放デイの条番号は「準用」で読む

上記の条文はいずれも児童発達支援の章に置かれています。放デイについては、同省令第71条が「第34条から第45条まで(中略)の規定は、指定放課後等デイサービスの事業について準用する」と定めており、これによって第44条・第45条が放デイにも適用されます(出典:e-Gov 同基準 第71条)。

自治体の指定申請書類や集団指導資料では「第71条において準用する第44条」という書き方をされることがあります。指針や委員会規程に条番号を書く場合は、この準用の形で書いておくと整合が取れます。


2. 虐待防止の4点セット

(1) 虐待防止委員会

省令上は「虐待の防止のための対策を検討する委員会を定期的に開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底を図ること」とされ、テレビ電話装置等の活用も明文で認められています(第45条第2項第1号)。

解釈通知では、委員会の役割として次の3つが示されています(出典:こども家庭庁掲載 解釈通知(35)①)。

運用面では、通知に次の記載があります。

(出典:同 解釈通知(35)①)

(2) 虐待防止のための指針

ここは実務でよく誤解される点です。省令第45条第2項は「指針の整備」を明記していません。解釈通知でも「次のような項目を定めた『虐待防止のための指針』を作成することが望ましい」という書きぶりです(出典:同 解釈通知(35)②)。

一方で、運営規程には「虐待の防止のための措置に関する事項」を必ず定める必要があります(第37条第11号)。また後述のとおり、虐待防止措置未実施減算の該当事実にも「指針がない場合」は含まれていません。

つまり、指針は減算要件ではないが、実務上は作成が強く推奨されるという整理になります(身体拘束の指針は省令上必須なので、両者を1本の指針にまとめて作る事業所が多い運用です)。ただし、指針の提出・記載事項について独自の取扱いを求める自治体もあり得るため、指定権者(都道府県・指定都市・児童相談所設置市)の最新の公表資料で必ず確認してください

通知が示す指針の項目は次のとおりです。

(3) 虐待防止研修

通知は「虐待防止委員会が作成した研修プログラムを実施し、定期的な研修を実施(年1回以上)するとともに、新規採用時には必ず虐待防止の研修を実施することが重要」とし、研修の実施内容について記録することが必要としています。研修は事業所内研修のほか、協議会や基幹相談支援センター等が実施する研修に参加した場合でも差し支えないとされています(出典:同 解釈通知(35)③)。

(4) 虐待防止担当者

通知は「児童発達支援管理責任者等を配置すること」とし、担当者および管理者について、都道府県が行う研修(「地域生活支援事業の実施について」(平成18年8月1日障発第0801002号)別紙2「地域生活支援促進事業実施要綱」の別記2-4の3(3))を受講することが望ましいとしています(出典:同 解釈通知(35)④)。都道府県研修は開催時期・定員が自治体ごとに異なるため、募集情報は指定権者のサイトで確認が必要です。


3. 身体拘束等適正化の3点セット

(1) 身体拘束適正化検討委員会

通知は、事業所に従事する幅広い職種で構成し、専任の身体拘束等の適正化対応策を担当する者を決めること、第三者や専門家(精神科専門医等の医師、看護職員等)の活用に努めること、法人単位での設置も可能であることを示しています。開催頻度は少なくとも1年に1回、虐待防止委員会との一体的な設置・運営も差し支えないとされています。また委員会の対応状況は適切に記録の上、5年間保存が必要です(出典:同 解釈通知(34)②)。

委員会で回すべきPDCAとして、通知は次を想定しています。

  1. 身体拘束等について報告するための様式を整備する
  2. 従業者は身体拘束等の発生ごとに状況・背景等を記録し、様式に従って報告する
  3. 委員会で報告事例を集計・分析する(報告事例がない場合でも、未然防止の観点から支援の状況等を確認することが必要
  4. 発生原因・結果等をとりまとめ、当該事例の適正性と廃止に向けた方策を検討する
  5. 報告された事例および分析結果を従業者に周知徹底する
  6. 方策を講じた後、その効果を検証する

「今期は身体拘束ゼロだったので委員会は開かなかった」は通知に反します。ゼロでも開催し、支援状況の確認記録を残すのが正しい運用です。

(2) 身体拘束等の適正化のための指針

省令上必須です(第44条第3項第2号)。通知が示す盛り込み項目は次の7つ(出典:同 解釈通知(34)③)。

(3) 身体拘束等の適正化のための研修

指針に基づいた研修プログラムを作成し、定期的な研修を実施(年1回以上)新規採用時には必ず実施、実施内容の記録が必要です。重要なのは次のみなし規定で、「虐待防止に関する研修において身体拘束等の適正化について取り扱う場合は、身体拘束等の適正化のための研修を実施しているものとみなして差し支えない」とされています(出典:同 解釈通知(34)④)。

ただし「みなし」を使う場合でも、その回のレジュメ・資料・出席簿に身体拘束のテーマが明示されていることが実務上の証拠になります。議題名が「虐待防止研修」だけだと、後から証明できません。


4. 身体拘束の3要件と記録の書き方

3要件は「全て満たす」

要件 内容
切迫性 利用者本人又は他の利用者等の生命、身体、権利が危険にさらされる可能性が著しく高いこと
非代替性 身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する方法がないこと
一時性 身体拘束その他の行動制限が一時的であること

(出典:厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課 地域生活・発達障害者支援室「身体的拘束等の適正化の推進」/放課後等デイサービスガイドライン(令和6年7月・こども家庭庁)第7章2(2))

放課後等デイサービスガイドラインは、放デイに即して「やむを得ず身体拘束を行う場合は、切迫性、非代替性、一時性の3つの要件を全て満たすことが必要」と明記し、さらに、身体拘束を行わざるを得ない事態が想定される場合には、いかなる場合にどのような形で身体拘束を行うかについて設置者・管理者が組織的に決定し、児童発達支援管理責任者は放課後等デイサービス計画(個別支援計画)に、身体拘束が必要となる状況、態様・時間等をこどもや保護者に事前に十分説明し了解を得た上で記載することが必要としています(出典:同ガイドライン第7章2(2))。

なお同ガイドラインは、職員が自分の体でこどもを押さえつけて行動を制限すること、自分の意思で開けることのできない居室等に隔離すること等は身体拘束に当たるとしています。

記録に必ず入れる4項目+1

省令第44条第2項は、記録事項を明示しています。

やむを得ず身体拘束等を行う場合には、その態様及び時間、その際の障害児の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由その他必要な事項を記録しなければならない(出典:e-Gov 同基準 第44条第2項)

さらに解釈通知は、緊急やむを得ない理由については、切迫性・非代替性・一時性の3要件を全て満たし、かつ「組織としてそれらの要件の確認等の手続を行った旨」を記録しなければならないとしています(出典:同 解釈通知(34)①)。

つまり記録様式には最低限、 ①態様(何をどのように) ②時間(開始〜終了、実測) ③その際のこどもの心身の状況緊急やむを得ない理由(3要件それぞれの当てはめ)組織として要件確認の手続を行った旨(誰がいつ判断したか) の5要素が必要です。「暴れたため一時的に制止」だけの記載では、④⑤が欠落します。

保存年限は5年

身体拘束等の記録は、省令第54条第2項第4号により、指定児童発達支援を提供した日から5年間保存が義務づけられています(放デイは第71条で準用)(出典:e-Gov 同基準 第54条第2項第4号)。


5. 通報義務:2つの法律を使い分ける

放デイの現場では、通報・通告の根拠法が2つあります。

場面 根拠 通報・通告先 義務の性質
職員による虐待を受けたと思われるこどもを発見 障害者虐待防止法 第16条第1項 市町村 「速やかに通報しなければならない」
保護者による虐待を受けたと思われるこどもを発見 児童虐待防止法 第6条第1項 市町村、都道府県の設置する福祉事務所、児童相談所(児童委員を介する方法も可) 「速やかに通告しなければならない」

(出典:e-Gov「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」第16条/e-Gov「児童虐待の防止等に関する法律」第6条)

ポイントは3つです。

放課後等デイサービスガイドラインも、「事業所の中だけで事実確認を進め、事態を収束させることなく、必ず市町村に通報した上で行政と連携して対応を進める必要がある」と明記しています(出典:同ガイドライン第7章2(1))。


6. 減算:率と「該当する事実」

減算の内容は、こども家庭庁が公表している留意事項通知(児童福祉法に基づく指定通所支援及び基準該当通所支援に要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について。最終改正:こ支障第88号 令和8年3月31日)改正後全文で確認できます。

減算 放デイの減算率 該当する「事実」
虐待の防止のための取組が適切に行われていない場合(虐待防止措置未実施減算) 所定単位数の100分の1 ①虐待防止委員会を1年に1回以上開催していない ②虐待防止研修を1年に1回以上実施していない ③虐待防止措置(委員会の開催・研修の実施)を適切に実施するための担当者を配置していない
身体拘束等の廃止・適正化のための取組が適切に行われていない場合(身体拘束廃止未実施減算) 所定単位数の100分の1 ①求められる身体拘束等に係る記録が行われていない ②身体拘束適正化検討委員会を1年に1回以上開催していない ③身体拘束等の適正化のための指針を整備していない ④身体拘束等の適正化のための研修を1年に1回以上実施していない

(出典:こども家庭庁「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について」掲載 留意事項通知(改正後全文)第二の1(9)(10))

補足として、同通知では情報公表未報告は所定単位数の100分の5、業務継続計画(BCP)未策定は100分の1(いずれも放デイの場合)と定められています。障害児入所支援は身体拘束・情報公表がいずれも100分の10、BCPが100分の3で、通所とは率が異なります。

減算はどう発動するか(ここが実務の肝)

留意事項通知は、上記の事実が生じた場合の流れを次のように定めています。

  1. 該当する事実が生じた場合、速やかに改善計画を都道府県知事等に提出
  2. 事実が生じた月から3月後に、改善計画に基づく改善状況を都道府県知事等に報告
  3. 事実が生じた月の翌月から改善が認められた月までの間利用者全員について所定単位数から減算

なお「事実が生じた」とは、運営基準を満たしていない状況が確認されたことを指すとされています。また、事実が継続する場合には改善指導が行われ、指導に従わない場合は特別な事情がある場合を除き指定の取消しを検討するとされています(出典:同 留意事項通知 第二の1(9)③・(10)③)。

「1回開催を忘れた」=その月だけの減算では済まない点に注意してください。改善が認められるまで利用者全員に及びます。

身体拘束の記録に関する重要な注意

通知(9)③(一)は、「施設等において身体拘束等が行われていた場合ではなく、記録が行われていない場合である」と明示しています。つまり減算の対象は「拘束をしたこと」ではなく「記録をしなかったこと」です。要件を満たす拘束を適切に記録している事業所は、この事実には該当しません。

2026年度(令和8年度)の状況について

こども家庭庁は「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について」を公表しています。ただし、同ページ掲載の「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について」および留意事項通知の新旧対照表(令和8年4月2日掲載分)には、虐待防止・身体拘束等適正化に係る減算の率および要件の変更は記載が確認できませんでした(2026年7月23日時点で本記事が確認した範囲)。上記の減算率は、令和8年3月31日最終改正の留意事項通知(改正後全文)に記載されている内容です。制度は改正されるため、必ず最新版をご確認ください。


7. そのまま使えるセルフチェックリスト

運営指導前の自己点検に使えます。「あり/なし」ではなく、証拠書類の所在(ファイル名・保管場所)まで書けるかで判定してください。

虐待防止

身体拘束等適正化

一体運用する場合


8. よくある落とし穴


出典一覧(すべて2026-07-23に参照)


免責事項


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本記事は制度の理解を助けるための一般的な情報提供であり、行政書士・社会保険労務士等の独占業務の代行ではありません。ひな形・記入例はそのまま提出できるものではなく、各事業所の実態に合わせた編集が必要です。運営指導の結果・加算の取得・減算の回避を保証するものではありません。制度は改正されます。必ず指定権者(都道府県・市)およびこども家庭庁等の最新の公表資料をご確認ください。

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