障害福祉サービス等情報公表制度|放デイが未報告だと減算(100分の5)。報告手順と年次更新の実務
「情報公表システム(WAM NET)への報告、去年やったかどうか分からない」——放課後等デイサービス(以下、放デイ)の管理者から意外なほどよく聞く状態です。担当者の退職でID・パスワードごと引き継ぎが途切れ、未報告のまま数か月……というパターンが典型で、この場合情報公表未報告減算(所定単位数から100分の5を減算)が毎月かかり続けます。体制系の減算(身体拘束・虐待防止・BCPの各1%)のなかで、率がいちばん大きいのがこの減算です。
放デイは児童福祉法に基づく障害児通所支援(所管はこども家庭庁)で、報告義務の根拠は児童福祉法第33条の18です。この記事では、e-Gov法令検索の条文とこども家庭庁の留意事項通知を実際に確認したうえで、制度の仕組み・減算・報告手順(WAM NET)・年次更新の回し方を整理しました。
この記事でわかること
- 障害福祉サービス等情報公表制度の仕組みと、放デイの報告義務の根拠条文(児童福祉法第33条の18)
- 未報告時の減算(100分の5)の率・かかる期間・起算の正確な読み方
- 報告しないまま放置した場合の是正命令→指定取消しまでの法律上の流れ
- WAM NET(障害福祉サービス等情報公表システム)での報告手順と、年1回の定期報告の実務
- 担当者交代で報告が途切れないための引き継ぎチェックリスト
1. 制度の仕組み:報告するのは事業者、公表するのは都道府県
障害福祉サービス等情報公表制度は、「事業者が都道府県に情報を報告し、都道府県がそれを公表する」二段構えの制度です。放デイを含む指定障害児通所支援事業者について、児童福祉法第33条の18第1項はこう定めています。
指定障害児通所支援事業者及び指定障害児相談支援事業者並びに指定障害児入所施設等の設置者(中略)は、指定通所支援、指定障害児相談支援又は指定入所支援(中略)の提供を開始しようとするとき、その他内閣府令で定めるときは、内閣府令で定めるところにより、情報公表対象支援情報(中略)を、当該情報公表対象支援を提供する事業所又は施設の所在地を管轄する都道府県知事に報告しなければならない。 (出典: e-Gov法令検索 児童福祉法 第33条の18第1項)
報告する情報は、提供する支援の内容と事業者・施設の運営状況に関する情報のうち、保護者が適切かつ円滑にサービスを利用する機会を確保するために公表されることが適当なものとして内閣府令で定めるものです。都道府県知事は報告を受けた後、その内容を公表しなければならないとされ(同条第2項)、必要があれば報告が真正であることを確認するための調査もできます(同条第3項)。
実務上の窓口になるのが、福祉医療機構(WAM)が運営する障害福祉サービス等情報公表システム(WAM NET)です。同システムの関係連絡板ページには、事業者用の操作説明書(マニュアル)・記入要領・よくある質問(Q&A)が掲載されています(同ページのヘルプデスクは都道府県・指定都市・中核市の専用窓口です。事業者のログインID等の照会は指定権者に行ってください)。
放置すると減算では済まない:命令→指定取消しの流れ
条文はさらに先まで用意しています。
- 報告をしない・虚偽の報告をした・調査を受けない(妨げた)場合、都道府県知事は期間を定めて、報告を行い、内容を是正し、又は調査を受けることを命ずることができる(第33条の18第4項)
- 指定障害児通所支援事業者がこの命令に従わないときは、指定の取消し又は期間を定めた指定の全部・一部の効力停止ができる(同条第6項)
(出典: e-Gov法令検索 児童福祉法 第33条の18)
未報告は「減算されるだけの手続ミス」ではなく、最終的に指定に関わる義務違反です。
2. 未報告減算:率・期間の正確な読み方
こども家庭庁の留意事項通知(改正後全文)第二の2(1)(11)は、次のとおり定めています。
- 対象: 児童発達支援、放課後等デイサービス、居宅訪問型児童発達支援、保育所等訪問支援、障害児入所支援、障害児相談支援、共生型障害児通所支援
- 率: 放デイ等は所定単位数の100分の5に相当する単位数を所定単位数から減算(障害児入所支援は100分の10)
- 期間: 児童福祉法第33条の18の規定に基づく報告を行っていない事実が生じた場合に、その翌月から、報告を行っていない状況が解消されるに至った月まで、当該事業所の利用者全員について減算
(出典: 同(11)①〜③)
ポイントは3つです。
- 「×95/100」型である。所定単位数「から」5%を引く型で、計画未作成減算(所定単位数そのものが70%・50%になる型)とは書き方が違います。率は、こども家庭庁「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年度)」の放課後等デイサービス給付費の欄でも×95/100と確認できます。告示上の根拠は平24厚告122別表第3の1の注6の4です(指導監査通知の別紙・第9に「法第33条の18第1項の規定に基づく情報公表対象支援情報に係る報告を行っていない場合は、所定単位数の100分の5に相当する単位数を所定単位数から減算しているか」と掲げられています)。
- 翌月から・解消月まで。未報告の事実が生じた月の翌月からかかり、報告を済ませた(解消した)月までで止まります。気づいたら月内に報告まで完了させる実益があります。
- 利用者全員にかかる。個別支援計画未作成減算のような「該当する障害児のみ」ではなく、事業所の利用者全員です。定員10人・月23日開所の事業所なら、5%でも月額で見ると無視できない額になります。
この減算は令和6年度報酬改定で新設されたものです。改定資料は「利用者への情報公表、災害発生時の迅速な情報共有、財務状況の見える化の推進を図る観点から、障害福祉サービス等情報公表システム上、未報告となっている事業所に対する『情報公表未報告減算』を創設する」と説明しています。あわせて、指定の更新の申請があった際に、情報公表に係る報告がされていることを確認する仕組みも導入されました(出典: 厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」。同資料の当該箇所は障害者総合支援法第76条の3側の記載。障害児通所支援の減算根拠は児童福祉法第33条の18)。つまり、未報告のままだと6年ごとの指定更新でも確実に引っかかる構造になっています。
3. 報告手順:WAM NETでの操作の流れ
報告は書面郵送ではなく、原則として障害福祉サービス等情報公表システム(WAM NET)上で行います。大枠の流れは全国共通で、指定権者(都道府県・指定都市・中核市等)の案内では次のように整理されています(以下は大阪市の案内で確認した手順の例)。
- 基本情報の登録: 法人・事業所の基本情報をシステムに登録する。この登録は都道府県等(指定権者)が行うため、新規指定後にまだ登録されていない場合は指定権者に確認する
- ログインID・パスワードの取得: 登録されるとシステムから通知される
- ログインして事業所詳細情報を入力: 事業所情報の照会・編集メニューから、各タブの詳細情報(運営状況・従業者・サービス内容等)を入力する
- 承認申請: すべての入力完了後、「承認者へ申請する」で指定権者に承認申請する
- 指定権者の承認・公表: 承認されると、システム上で公表される
(出典: 大阪市「障がい福祉サービス等情報公表制度」・WAM NET「障害福祉サービス等情報公表システム」掲載の案内)
報告のタイミング:新規指定時+年1回の定期更新
報告が必要になるのは、条文上「提供を開始しようとするとき、その他内閣府令で定めるとき」です。実務では、新規指定時に加えて年1回の定期更新が求められます。たとえば大阪市は「定期的(年1回)に更新」が必要とし、令和7年度分の報告期間を「令和8年5月1日から7月31日まで」と案内しています。すでに報告済みの事業者も毎年度、情報の更新が必要です。
報告期間・締切は指定権者ごとに異なります。 自分の指定権者の案内(「情報公表」「WAM NET」で自治体サイト内を検索)で、今年度の報告期間を必ず確認してください。
なお大阪市は、報告を行っていれば、承認前の「未承認」状態や差戻し中は減算対象とならない旨も案内しています。この種の取扱いの細部(承認遅延時の扱い・差戻し時の期限)は指定権者の運用によるため、該当したら指定権者に確認するのが確実です。
4. そのまま使える|情報公表の年次チェックリスト
A. 今すぐ確認(現状把握)
- □ WAM NETの公表ページで自事業所を検索し、公表されているか・内容が最新かを確認したか
- □ システムのログインID・パスワードが分かる状態か(分からなければ指定権者に確認。IDは法人単位で発行される運用が一般的)
- □ 直近の報告(承認申請)を行った年月を特定できるか
- □ 承認申請後に差戻しになったまま放置されていないか
B. 年次更新(毎年度)
- □ 指定権者の今年度の報告期間を確認したか
- □ 従業者数・営業時間・利用定員など変わった項目を反映したか
- □ 入力後、承認申請まで完了したか(入力保存だけでは報告になりません)
- □ 承認された(公表された)ことを確認し、完了日を記録したか
C. 引き継ぎ(担当者交代時)
- □ ログイン情報・報告期間・操作マニュアルの場所を引き継ぎ書に明記したか
- □ 年次報告を年間行事予定(自己評価・避難訓練等と同じ表)に入れたか
5. よくある誤解
「WAM NETは任意の情報サイト」 → 報告は児童福祉法第33条の18に基づく法律上の義務で、未報告は減算(放デイは100分の5)と是正命令・指定取消しの対象です。
「開設時に報告したから終わり」 → 年1回の定期更新が必要です。更新しないまま年度が替わると、未報告扱いになり得ます。
「入力したから報告済み」 → 入力後の承認申請までがワンセットです。申請ボタンを押していない「下書き」状態で止まっている事業所が実際にあります。
「介護サービス情報公表制度と同じ」 → 介護保険の介護サービス情報公表制度とは別制度です。放デイは児童福祉法体系(報告先は障害福祉サービス等情報公表システム)で確認してください。
「減算は5単位とか小さい額」 → 所定単位数の5%です。1%型(身体拘束・虐待防止・BCP)より大きく、利用者全員・毎月かかります。
出典一覧(すべて2026年7月27日に参照)
- e-Gov法令検索「児童福祉法(昭和22年法律第164号)」第33条の18(第1項報告義務・第2項公表・第3項調査・第4項命令・第6項指定取消し等) https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000164
- こども家庭庁「児童福祉法に基づく指定通所支援及び基準該当通所支援に要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(改正後全文)第二の2(1)(11) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/2c5e1bb4-ee80-462b-992f-06f0d8c9b774/4aacbf83/20260402_policies_shougaijishien_shisaku_r8hoshukaitei_17.pdf
- 厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」(令和6年2月6日)「情報公表未報告の事業所への対応」 https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001204018.pdf
- 厚生労働省(こども家庭庁支援局長・厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長連名通知)「指定障害児通所支援事業者等の指導監査について」別紙「主眼事項及び着眼点等(指定放課後等デイサービス)」第9(情報公表未報告減算・平24厚告122別表第3の1の注6の4) https://www.mhlw.go.jp/content/001477137.pdf
- こども家庭庁「障害福祉サービス費等の報酬算定構造(令和8年度)」放課後等デイサービス給付費欄(×95/100を確認) https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/2c5e1bb4-ee80-462b-992f-06f0d8c9b774/dd354230/20260326_policies_shougaijishien_shisaku_r8hoshukaitei_03.pdf
- WAM NET「障害福祉サービス等情報公表システム関係連絡板」(事業者用の操作説明書・記入要領・よくある質問(Q&A)の掲載、および都道府県・指定都市・中核市専用ヘルプデスクの案内を確認) https://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/top/shofukuinfopub/
- 大阪市「障がい福祉サービス等情報公表制度」(年1回の定期更新・令和7年度報告期間=令和8年5月1日〜7月31日・基本情報登録→ID取得→入力→承認申請の手順・未承認/差戻し中の取扱い) https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000602376.html
本記事で「確認できなかった/要確認」とした事項
- 児童福祉法第33条の18第1項の「その他内閣府令で定めるとき」(定期報告の頻度・基準日)の内閣府令(児童福祉法施行規則)の該当条番号は、今回の取得範囲では特定できませんでした。年1回の定期更新・報告期間は指定権者の案内(大阪市の例)に基づいて記載しています。自分の指定権者の今年度の案内を必ず確認してください。
- 「未承認・差戻し中は減算対象外」は大阪市の案内で確認した運用です。全指定権者共通と断定できる一次情報は確認していません。
- 指定更新時の報告確認の仕組みは、参照した改定資料では障害者総合支援法(第76条の3)側の記載として確認したものです。障害児通所支援側の施行規則上の対応条文は今回未確認のため、本文にその旨を明記しています。
- 令和8年度報酬改定(処遇改善加算の拡充・臨時応急的な見直しが柱)で、本記事参照時点の留意事項通知(改正後全文)における本減算の率・要件・期間の変更は確認できませんでした。
※本記事に記載した条番号・減算率は、上記一次情報を2026年7月27日時点で参照して確認したものです。制度は改正されます。
免責
- 本記事は情報提供を目的とした一般的な解説であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。個別の減算該当性・報告手続の最終判断は、指定権者(都道府県・指定都市・中核市・児童相談所設置市等)にご確認ください。
- 記載したチェック項目・手順はたたき台であり、そのままでは使えません。自事業所の実態と指定権者の運用に合わせて必ず編集してください。
- 当社は士業ではなく、社会保険労務士・行政書士等の独占業務(官公庁提出書類の作成代行・提出代行・個別の法令判断・代理)を行うものではありません。
- 運営指導の結果、指摘事項の有無、加算の取得、減算の回避を保証するものではありません。
書類づくりの時間を短縮したい場合
ここまでの手順どおりに進めれば、情報公表の報告・年次更新はご自身で回せます。必要なのは、ログイン情報の管理と年間予定への組み込みだけです。
まず全体像を無料で確認したい場合は、放課後等デイ 実地指導 準備チェックリスト(要点版) を無料でダウンロードできます(メールアドレスの登録が必要です)。
そのうえで、「運用は分かったが、システムに入力する運営状況の情報を書類から拾い直す時間がない」という場合の選択肢として、当社では 放課後等デイサービス 減算・実地指導 完全パック(¥29,800) を用意しています。編集可能なdocx形式で、法定研修5本・BCP記入例(感染症編/自然災害編)・虐待防止/身体拘束等適正化指針・実地指導チェックリスト・情報公表転記シート(システム入力項目を事前整理するためのシート)が入っています。
※デジタル商品のため、ダウンロード後の返金はお受けできません(ファイルの破損・不具合等があった場合は、再送または返金で対応します)。
収録物はすべて記入例=要編集のテンプレートで、そのまま提出・掲示できる完成品ではありません。士業の独占業務(作成代行・提出代行・個別の法令判断・代理)の代行ではありません。運営指導の結果・減算回避・加算取得を保証するものではありません。要件・様式・頻度は指定権者および年度により異なるため、最終確認は原典(省令・告示・通知)と指定権者の資料でお願いします。
研修も指針もBCPも、作る時間がない場合
この記事の手順どおりに自分で作れば費用はかかりません。時間のほうを買いたい場合は、放課後等デイに絞って編集可能なWord形式で一式にまとめたパックがあります。法定研修5本・虐待防止/身体拘束等適正化の指針・BCP記入例・実地指導チェックリスト・情報公表の転記シート。
放課後等デイ 減算・実地指導 完全パック(¥29,800・編集可docx)記入例・ひな形は各事業所の実態に合わせた編集が必要です/士業の独占業務の代行ではありません/運営指導の結果を保証するものではありません。