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放課後等デイのカスタマーハラスメント対策|2026年10月1日義務化と10項目の実務対応

公開 2026-08-30 最終更新 2026-08-30 文責 合同会社ヌルセット

放課後等デイサービス(以下「放デイ」)の管理者・児童発達支援管理責任者(児発管)は、虐待防止・身体拘束等適正化・BCP・感染症対策など、児童福祉法の運営基準に基づく義務にはすでに慣れてきたはずです。ここにもう1つ、根拠法令がまったく別の新しい義務が加わります。カスタマーハラスメント(カスハラ)対策です。

根拠は児童福祉法の運営基準ではなく、労働施策総合推進法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)という労働法の一般法です。放デイに限らず、労働者を1人でも雇用するすべての事業主が対象になります。施行は2026年10月1日。この記事執筆時点(2026年8月11日)で1か月半ほど先ですが、方針の策定・相談窓口の指定・職員への周知には準備期間が要るため、今から着手する前提で書いています。

放デイならではの論点もあります。カスハラの「顧客等」には保護者だけでなく利用児本人が含まれ得る一方、放デイの利用者は障害児です。厚生労働省のリーフレットは対策を講じる際に障害者差別解消法上の合理的配慮の提供義務に留意する必要があると明記しており、この両立が実務上の一番の悩みどころになります。

この記事でわかること


根拠条文と施行日 — 労働施策総合推進法第33条

カスハラ対策の義務は、労働施策総合推進法(昭和41年法律第132号)の第33条(職場における顧客等の言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置等)に規定されています。この条文は令和7年法律第63号(公布日2025年6月11日)による改正で新設され、2026年10月1日に施行されます(出典: e-Gov法令検索 労働施策総合推進法 施行日2026年10月1日時点のリビジョン)。

第33条第1項は次のように定めています(条文要旨)。

事業主は、職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者(「顧客等」)の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたもの(「顧客等言動」)により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、相談体制の整備、抑止のための措置その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

条文上、中小企業に対する猶予規定は見当たりません。「事業主は…講じなければならない」という義務規定であり、努力義務ではありません。放デイの多くは小規模事業者ですが、この点でパワハラ防止措置(労働施策総合推進法第30条の2、令和4年4月から中小企業にも義務化済み)と同じ扱いになると考えておくのが安全です。

カスハラの定義(3要素)と「顧客等」の範囲

厚生労働省のリーフレット「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」は、カスハラを次の3要素すべてを満たすものと定義しています(出典: 同リーフレット)。

要素 内容
顧客等の言動であって
労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより
労働者の就業環境が害されるもの

電話やSNS等インターネット上で行われるものも含まれます。「顧客等」の範囲は「顧客、取引の相手方、施設(駅、空港、病院、学校、福祉施設、公共施設等)の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者」とされ、リーフレットは例示に「福祉施設」を明記しています。放デイに引き直すと、保護者・送迎に関わる家族・地域の関係者などは「顧客等」に含まれ得ます。

社会通念上許容される範囲を超えた言動の例として、リーフレットは「そもそも要求に理由がない要求」「契約等により想定しているサービスを著しく超える要求」「身体的な攻撃」「精神的な攻撃(脅迫・中傷・暴言・土下座の強要等)」「威圧的な言動」「継続的、執拗な言動」「拘束的な言動(不退去、居座り、監禁)」を挙げています。

事業主が必ず講じなければならない10項目

厚労省リーフレットは、事業主が必ず講じなければならない措置を次の10項目に整理しています(太字は原文で「他のハラスメントで講ずべき措置とは異なる内容」と注記されている項目)。

区分 項目
方針の明確化・周知啓発 ①毅然とした態度で対応し労働者を保護する旨の方針を明確化・周知啓発する/②カスハラの内容とあらかじめ定めた対処の内容を労働者に周知する
相談体制の整備 ③相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する/④相談窓口担当者が適切に対応できるようにする
事後の迅速かつ適切な対応 ⑤事実関係を迅速・正確に確認する/⑥被害者への配慮のための措置を行う/⑦再発防止に向けた措置を講ずる
抑止のための措置 ⑧特に悪質と考えられるカスハラへの対処方針をあらかじめ定め、労働者に周知し、当該対処を行うことができる体制を整備する
そのほか ⑨相談者等のプライバシーを保護するための措置を講じ周知する/⑩相談したこと等を理由とする不利益取扱いをしない旨を定め、周知・啓発する

このうち⑧は他のハラスメント(パワハラ・セクハラ・マタハラ)の指針にはない、カスハラに固有の新しい項目です。「特に悪質」なケースを想定した事前の対処方針(管理監督者への即時報告基準、警察への通報基準、本社・本部への情報共有ルート等)を、発生してから考えるのではなくあらかじめ定めておくことが求められています。

罰則ではなく「勧告→不服従なら公表」という仕組み

第33条自体には罰金や拘禁刑の規定はありません。実効性の担保は、同法第42条(助言、指導及び勧告並びに公表)によります。

厚生労働大臣は、第三十三条第一項及び第二項…の規定に違反している事業主に対し…勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができる。

つまり「①違反→②厚労大臣が助言・指導・勧告→③勧告に従わない→④公表」という段階を踏みます。行政指導と社名公表のリスクがあるという理解が正確で、「罰金がある」という説明は一次情報に照らすと不正確です。

なお同法第51条は「第四十五条第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、二十万円以下の過料に処する」と定めていますが、これは行政からの報告徴収に応じない場合の一般的な過料規定であり、カスハラ対策(第33条)そのものへの罰則ではありません。この2つを混同した説明が出回ることがあるため、注意してください。

放デイ特有の論点: 利用児本人の言動と障害者差別解消法

放デイの利用者は障害児です。カスハラの「顧客等」には、放デイの場合、利用児本人や保護者が含まれ得ますが、厚労省リーフレットは対策を講じる際の留意点として次のように明記しています。

※対策を講ずる際には、消費者の権利や、障害者差別解消法における、障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供義務に留意する必要があります。

障害者差別解消法は令和3年の改正(令和3年法律第56号)により、2024年4月1日から民間事業者の合理的配慮の提供が努力義務から法的義務に変わっています(出典: 内閣府リーフレット「令和6年4月1日から合理的配慮の提供が義務化されました」)。

ここが放デイ特有の悩みどころです。強い他害行動やパニックなど、障害特性に起因する利用児本人の言動を、他の業種と同じ基準で「悪質なカスハラ」として扱ってよいのかは、一次情報の中に明確な整理を見つけられませんでした。本記事では断定を避けますが、実務上は次のような整理が現実的だと考えられます。

2026年10月1日までにやることチェックリスト

よくある誤解を3つ

1) パワハラ・セクハラ対策をしていれば自動的にカスハラも対応済みになる 第33条はパワハラ(第31条)・セクハラ(男女雇用機会均等法)とは別条・別の措置義務です。既存のハラスメント防止規程に「カスハラ」の一言を足すだけでなく、方針の明確化・相談窓口・⑧の事前対処方針まで、10項目に沿って整備されているか個別に確認してください。

2) 中小企業や小規模事業所は当面猶予される 条文(第33条)にも厚労省リーフレットにも、中小企業向けの猶予規定は確認できませんでした。パワハラ防止措置が令和4年4月に中小企業まで義務化された経緯と同様、施行日から即義務と考えて準備するのが安全です。

3) 保護者からの理不尽な要求には、カスハラ対策があるので毅然と拒否してよい 方向性としては誤りではありませんが、放デイでは障害者差別解消法上の合理的配慮の提供義務との両立が常に問われます。「毅然とした対応」と「利用児・保護者への必要な配慮」を切り分けて考える必要があり、一律の対応マニュアルだけで判断せず、個別事案ごとに検討する体制を作ることが重要です。


出典一覧(すべて2026年8月11日参照)

免責

自分で作るなら、この記事の手順で足ります

10項目のうち、方針の文書化・相談窓口の指定・周知は、この記事の一覧をそのままチェックリストにして自事業所の情報(担当者名・連絡先)を書き込めば自力で進められます。特別なツールは要りません。

一方で、放デイ運営に必要な法定研修や指針をまとめて整えたい場合は、放課後等デイの減算・実地指導対策パック(¥29,800 税込)を用意しています。編集可能なdocx形式 計13ファイルで、法定研修5本(虐待防止/身体拘束等適正化/感染症・食中毒予防/ハラスメント対策/BCP)+BCP記入例(自然災害編・感染症編)+虐待防止/身体拘束等適正化の指針+実地指導チェックリスト+情報公表転記準備シートをまとめたものです。カスタマーハラスメント対策の10項目に完全対応する専用ツールではなく、収録済みの「ハラスメント対策研修」はパワハラ・セクハラ・マタハラを中心とした内容(保護者・利用児からの迷惑行為への配慮に触れる項目を含む)です。

※収録物の記入例・ひな形はそのまま使えるものではなく、貴事業所の実情に合わせた編集が必要です。士業の独占業務の代行ではなく、実地指導の結果・加算取得・監査通過を保証するものでもありません。デジタル商品のためダウンロード後の返金はお受けできません(ファイルの破損・不具合時は再送または返金で対応します)。

本記事は制度の理解を助けるための一般的な情報提供であり、行政書士・社会保険労務士等の独占業務の代行ではありません。ひな形・記入例はそのまま提出できるものではなく、各事業所の実態に合わせた編集が必要です。運営指導の結果・加算の取得・減算の回避を保証するものではありません。制度は改正されます。必ず指定権者(都道府県・市)およびこども家庭庁等の最新の公表資料をご確認ください。

研修も指針もBCPも、作る時間がない場合

この記事の手順どおりに自分で作れば費用はかかりません。時間のほうを買いたい場合は、放課後等デイに絞って編集可能なWord形式で一式にまとめたパックがあります。法定研修5本・虐待防止/身体拘束等適正化の指針・BCP記入例・実地指導チェックリスト・情報公表の転記シート。

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